350㎜と書いてあるのに350㎜で作ったらNG?図面のマイナス公差の意味と読み方

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図面の「350㎜ -1.5/-0.5」ってどういう意味?マイナスだけの公差がわかりにくい理由

製造現場で図面を見ていると、こんな表記に出くわすことがある。

350㎜ -1.5
    -0.5

「マイナスしかないのはなぜ?」「349.5㎜ -1じゃダメなの?」と疑問に思った人は少なくないはずだ。

20年以上、製造現場に関わってきた筆者も、最初はこの書き方が直感的にわかりにくかった。今回はその理由と意味をできるだけシンプルに解説する。


まずこの表記が何を意味するのか

350㎜ -1.5/-0.5 という表記は、上の数値が上限偏差、下の数値が下限偏差を示している。

  • 上限寸法:350 – 0.5 = 349.5㎜
  • 下限寸法:350 – 1.5 = 348.5㎜

つまり「348.5㎜ 〜 349.5㎜ の間に収めてください」という意味だ。

公差幅は 349.5 – 348.5 = 1㎜ となる。


なぜ「349.5㎜ -1」と書かないのか

ここが一番の疑問ではないだろうか。

「349.5㎜ -1」と書けば、下限が348.5㎜、上限が349.5㎜になる。数値としては同じだが、設計上の基準値(呼び寸法)が変わってしまうという問題が出る。

設計者が「この部品の基準は350㎜だ」と決めた場合、図面の呼び寸法は350㎜のままにしておく必要がある。なぜなら、

  • 他の部品との関係性(はめあいや組み付け)が350㎜を基準に設計されている
  • 図面全体の寸法体系が崩れてしまう
  • 後工程の担当者が混乱する

呼び寸法はあくまで設計上の基準点であり、そこからどれだけズレを許容するかを公差で表現する。だから呼び寸法は動かさず、公差の数値だけで許容範囲を指示するのがルールだ。


なぜプラスがゼロなのか――マイナスだけになる理由

「350㎜ +0/-0.5」のように、プラス側が0というケースもある。これはつまり「350㎜より大きくなってはいけない」という設計意図を示している。

例えば、穴に入れる軸の場合を考えてみよう。

  • 軸が太すぎる(350㎜を超える)→ 穴に入らない、または入れたとき焼き付く
  • 軸が細すぎる(348.5㎜を下回る)→ ガタが大きすぎて機能しない

この場合、「絶対に350㎜を超えてはいけないが、ある程度小さい分には許容できる」という設計判断がある。だからプラス側の公差は0、マイナス側だけに公差が設定される。

要するにマイナスだけの公差は、「この寸法を超えてはいけない」という設計者の強いメッセージだ。


では「-1.5/-0.5」のように両方マイナスの場合は?

今回の例のように、上下両方ともマイナスになる場合は「呼び寸法よりも小さい範囲に収めてほしい」という意味になる。

350㎜ -1.5/-0.5 であれば、

  • 350㎜ピッタリはNG(大きすぎる)
  • 349.5㎜〜348.5㎜の間がOK
  • 348.5㎜より小さいのもNG

組み付け上、350㎜以上になると干渉する、あるいは一定量削らないと仕上がりが確保できないといった現場の事情がこの数値に込められている。


マイナス公差を無視したネスティングが現場を苦しめる

ここからは、20年以上の現場経験で実際に遭遇した理不尽な話をする。

板金加工でよくあるのが、ネスティング(材料の取り数計算)でマイナス公差を考慮していないケースだ。

図面に「350㎜ -1.5/-0.5」と書いてあれば、曲げ後の仕上がりは348.5〜349.5㎜に収めなければならない。ところが、設計側がネスティングを組む際に呼び寸法の350㎜だけを基準にしてしまうと、材料の展開寸法がそもそもマイナス公差に対応していない状態になる。

つまり、

  • 材料の段階から寸法がマイナス方向に振られていない
  • ベンダー(曲げ加工機)で曲げても、公差範囲内に収まらない
  • 結果として不良品扱いになる

しかし冷静に考えてほしい。これはベンダー担当者の腕の問題ではなく、設計・展開寸法の検討段階で公差への配慮が不足していた可能性が高い。

曲げ加工には「曲げ伸び」という現象があり、材料を曲げると外側が伸びて内側が縮む。この伸び量を考慮して展開寸法を決めるのが正しい設計の手順だ。マイナス公差があるなら、展開寸法の時点でその分を織り込んでおかなければ、曲げた後に公差を満たすことはできない。

それを無視して「曲げで寸法が出ていない=不良品」と判断されるのは、現場の人間からすれば理不尽以外の何物でもない。

正しい対応順序はこうだ。

  1. 図面のマイナス公差を確認する
  2. 曲げ伸びを計算した上で展開寸法を決める
  3. 材料をマイナス公差に対応した寸法で切り出す
  4. その上でベンダーで曲げる

設計と製造が連携せず、図面だけを渡して「あとはよろしく」では、こういう問題が必ず起きる。マイナス公差の意味を設計者も製造担当者も共有しておくことが、不良ゼロへの第一歩だ。


現場で20年働いてわかったこと

この書き方が直感的にわかりにくい最大の理由は、「呼び寸法」と「実際に作る寸法」が一致しないからだと思う。

350㎜と書いてあるのに、350㎜で作ったらアウト。これは慣れるまで混乱する。

ただ、この表記には合理的な理由がある。設計者は「この部品の設計上の基準は350㎜」という事実を図面に残しつつ、製造側への許容範囲を公差で伝えている。呼び寸法を変えてしまうと、設計意図が伝わらなくなる。

問題は、その公差の意味が設計から製造まで正しく伝わっていないことだ。図面を渡して終わりではなく、マイナス公差がある場合は展開寸法への反映まで設計側が責任を持つべきだと思っている。


まとめ

  • 350㎜ -1.5/-0.5 は、許容範囲が 348.5〜349.5㎜、公差幅は 1㎜ という意味
  • 呼び寸法(350㎜)は設計上の基準点であり、変えることができない
  • マイナスだけの公差は「この寸法を超えてはいけない」設計者の意図
  • ネスティングでマイナス公差を無視すると、曲げ後に公差を満たせず不良品扱いになる
  • マイナス公差がある場合は展開寸法の段階で織り込むのが正しい設計の手順

図面の公差表記は、最初は呪文のように見えるが、設計者が何を守りたいのかを読み解く視点を持つと、意外とシンプルに理解できる。そしてその意味を製造側まで正しく伝えることが、現場の理不尽をなくす第一歩だ。

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